Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

    “今日はオレンジなのvv”
 


あのね、進さん。今日って何の日か知ってる?
あ、桜庭さんに訊いたら メェよ?
ヒル魔くんに訊くのも メェよ?
アメフトの交流戦が始まる日?
けい・うおずの初日?

  ぶぶー、違いま〜す。




     ◇◇



この春もまた、なかなかに波乱のお日和が続き、
桜は早いわ、爆弾低気圧が台風波に大暴れするわ、
気温も 5月の頭から3月半ばのそれを
行ったり来たりと乱高下してくれている中、

 「けい・うおずってのは どこのJRの新駅だ。」
 「や〜ん、ちやうのぉ。/////」

毎年言ってることだが、インカレアメフトの春は交流戦で始まる。
この春も、速足で桜が去ってしまった四月の半ばから、
川崎スタジアムや Aみのバイタルでのリーグ戦が始まっており。
秋の本戦、星取り戦のリーグ枠を越えての対戦もあったりするので、
ファンの間でも結構な人気。
そんな中、今日は何と初日から人気のあるチームがお目見えとあって、
スタジアムの入りも相当なものとなり。
そんな もてもてチームの一角を成すチーム同士、
直接の対決じゃあないものの、
同じスタジアムに来合わせたのをいいことに、
こちらも人気者の小さなマスコット・ボーイ君たちが
ピッチの端っこで仲良くお話ししていたりしたのだが。

 「やっぱし進さんてば、覚えてなかったの。」
 「まあ、それはしょうがなかろう。」

むしろあのお不動さんが覚えていたら大事だろうがと、
営業用の(?)かあいらしいカッコ、
チアリーダーたちと微妙にお揃いの
スムースジャージのシャツとホットパンツに
悪魔仕様のコウモリの翼とお尻尾というアイテムつきの子悪魔様が、
う〜むむむと口元をへの字にひん曲げて言ったものの。

 “今のそのカッコのヨウちゃんから そうと言われるのも、
  何だかなと思うけどな。”

オートバイ乗りの恐持てなお兄さんたちを“おらおらおら”と追い回している
日頃の激辛っぷりを知っているだけに。
あとで仕上げに付けるのだろうネコ耳カチューシャを片手に、
お友達からの相談へ“む〜ん”と小難しいお顔でいるマスコット坊やへ、
複雑な心中となった桜庭さんだったのも無理はないのだが。(う〜ん)

 「そいでね、葉柱のお兄さんはどうかなと思ったの。」
 「どうかなってのは何だ。」

こちらはシルバーナイツのマスコットのセナくんが、
ロマンチックなパフスリープのブラウスシャツの上へ、
体の前後ろへポンチョみたいに真四角の布を降ろした、
中世の騎士の陣羽織風のいで立ちに、
ボトムはやはり半ズボンという愛らしさで、
だってぇと小さな口許をうにむにとたわめると、

 「うあ、かぁわいいvv」
 「この二人を一度に見られるから、春の交流戦って好き〜vv」


ホントは勝手に撮ってはいけませんよの、
ケータイやスマホをかざしての撮影に勤しむお姉さんたちからの
熱烈な注目ももはや慣れたもの。
そんなことよりも、
どうしたもんかしらなんて聞きに来た小さなお友達の憤懣へ、

 “俺に訊かれてもなぁ。”

こちらさんも…金茶の目許をやや眇める妖一くんだってので、
ありゃこれはもしかして、と、
桜庭さんには何となくの察しがついたこと。

 葉柱のお兄さんも、
 四月十四日が何の日かなんて、
 全然の全く、知らなかったんだろうなということで。

 「別にいいんじゃね? そんなのいちいち知らなくても。」
 「そっかなぁ。」

ちなみに、今日のこのスタジアムでのゲームは、
先にシルバーナイツが組まれてて、
セナくんの付き添いの桜庭さんがしきりと時計を気にしている。
妖一くんも、フリル・ド・リザードが陣取っているお席へ戻らにゃならんのだが、
そっちはまま迷子になる恐れもないはずが、

 「くぉら。いつまで油を売ってやがるかな。」

もしかして迷子になったんじゃあと案じたか、
彼らにはお馴染みの響きのいいお声が背後から飛んで来たものだから、

 「わぁってるって。
  つか、迎えになんて来なくても………?」

小さい子供扱いすんなよなという意味合いのこと、
言い返しかかった子悪魔様が、
その文言と中途で凍らせたのは、
振り返った視野の中に収まった、賊大の長身な主将様が、
その大きい手に、オレンジだろう柑橘のお陽様を持っていたからで。

 「?? 何だ?」
 「〜〜〜〜。何でもねぇよ。///////」

間がいいんだか悪いんだか。
進に負けず劣らずな朴念仁なんだから、
今日が何の日か知ってるはずないよな、でもあのそのと。
耳年増で(…)口も達者なこの子悪魔さんが、
あうあうと口ごもってしまったほどの衝撃を受けた構図だと、
そこんところも気づいているやらいないやら。

 「判ったから…戻るぞ、ルイっ。」
 「何だよ、いきなり。」

話はもういいのか? じゃあ桜庭もセナ坊も後でなと。
何が何やら、一番判ってなかったらしいお兄さんの手をぐいぐい引いて、
スタンドの方へと退いてしまった子悪魔くん退場の巻を、

 「………。」
 「………。」

たぁっぷり30秒は無言のまま見送った、
シルバーナイツの大小二人の綺麗さんたち。

 「なぁんだ、葉柱のお兄さん知ってたんだ。」
 「セナくんセナくん、お声が真っ直ぐだよ? 大丈夫?」

こんな小さい子相手に、
しかも恋愛がらみという微妙に大人なネタで、
負けた訳じゃないからねなんて励ますこととなろうとは。
さしものアイドルさんも思わなんだに違いなく。
そんな二人をこっちも迎えに来た、王城の誇る最速の仁王様が、
こちらも判っているやらいないやら、
オレンジのスムージーの入ったカップをセナくんへと差し出して、
なぁんだvvと一気にご機嫌を修復しちゃうまで、あと5分ほど……。




     〜Fine〜  13.04.14.


  *すごい無理があるかもの、
   この顔触れでの“オレンジデー”ネタでした。
   聖バレンタインデーやホワイトデーまでならともかく、
   男子でこれを覚えてられるって、
   よほどにラブラブの熱愛中で、
   記念日も自分から言い出すような人じゃないと
   到底 無理だと思います。
   (桜庭くんはファン感謝デーのノリで覚えてたんでしょね。)

   だっていうのに、
   今年は思わぬヒットをかました朴念仁さんたちで。
   ……きっとあれですよ、
   協賛していた輸入商社か何かが、
   差し入れにって大盤振る舞いしてたのよ。(こらー)

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